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2006.02.07

制作ノート

この文章は、「タッチ、アート!体感する美術展」の図録に掲載するために書いたものです。
図録には、作品の写真もありますので、合わせてご覧ください。

■制作ノート
 『わがままな記憶をかたちにしてさかのぼる』

講演など頼まれると、どうしても話のとっかかりの部分で、自分自身の生い立ちをしゃべることになる。
何度も同じことを話していると、内容が色あせて感じてくる。
それならば、賞味期限の切れた記憶を、もう一度絵によって鮮やかによみがえらせてみようかというのが、今回の思いつきだ。
ひょっとしたらぼくは、人生で何度目かの転機を迎えているのかもしれない。
いままで引きずってきたものを断ち切って、新しい一歩を踏み出す準備をしているのだろうか。

作品の設置場所は、タッチ・コーナーにさせてもらった。
ギャラリーTOMの展示台を参考にして作られたという、壁面に沿って連なる木製の台は、作品をたどっていくのにもってこいの空間だ。
いつもは、壁面に垂直に並べている触覚絵画だが、全長10メートル以上にも及ぶと、触って鑑賞する人からは、手がだるくなったと言われたことが何度かあった。
日頃から、もう少し、いい条件で触ってほしいなあと思っていたので、このコーナーを下見してすぐに飛びついた。
部屋の3辺に連なる展示台は、点字ブロックなどの誘導がなくても、見えない人が1人でその展示台をたどって、行ったり来たりできる。
自分のペースで作品が触れるのである。
手引きの人に遠慮しながら作品を触る必要はない。そういった意味でもこの空間はとても自由だ。

「大きな作品は描かないのですか」とある展覧会場で聞かれたのは、描き出して、3年目ぐらいだっただろうか。
それならということで、A3サイズの立体コピーをいろんな方向に繋げて大きな絵にしてみた。
それが、1999年に発表した『指先で街を歩く──京都からギャラリイKまで』だ。
以後、大きな作品の魅力にとりつかれたぼくは、美術館やギャラリーの壁面・ガラス窓・造作してもらったパネルなど、いろんなところで横幅と高さに挑戦してきた。
いつのまにか、大きな画面にも直接描けるようになった。

立体コピーでの作品もたくさん制作してきたが、一番の難点は、色の表現が使えないことだ。
初めて、色つきの作品にウレタン塗装して触れる作品にしたのが、昨年サンディエゴ
美術館に出品した『Walking in the Town by Touch - from the acupuncturist's
studio』だ。
続いて今年ギャラリーはねうさぎで発表した『なにかがやってくる』には、ラミネート加工を施している。
これでやっと、カラーの作品を自由に触ってもらえるようになった。

今回、新しい試みとして、キューブ状の立体に描くことにした。
これこそ、「平面が立体に出会う」瞬間だと思っている。
今後、このようなかたちで、立体を制作していくつもりだ。

最後に、いろいろ新しい実験に快く技術と労を惜しまず提供してくださっている、伏見工芸の和田雅弘さんに感謝の意を記しておきたい。

2005年11月25日

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コメント

光島さん、富山のとーくるです。先日、やっと川越に行くことが出来ました。作品はいままでと違った印象を受けました。コーナーの形のためか、絵巻物みたいな感じです。展覧会全体も含めトラックバックさせていただきました。好き勝手書かせていただき感謝です。
そういえばこのブログ、さらに見やすい、読みやすいブログにデザイン変更されていて尊敬です。

投稿: とーくる(K) | 2006.03.04 01:10

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