« 岡崎アート散策 | トップページ | 透明人間 »

2007.06.03

美術に関心のない人も

お知らせでも案内していた、ビューの鑑賞ツアーが終わりました。
今回は、ぼくのわがままを聞いてもらい、ギャラリー巡りができた。

いつもは、鑑賞する絵を点図にしてもらっているが、今回は、代わりに近美周辺の点図の地図を作ってもらった。
かなりいいできだ。言葉によるアクセスマップ作りで、歩き回った街だが、
こうして点ずの地図を触っていると、改めて街が自分の中に入り込んできたのを実感した。
言葉で書くと永遠と続く道だが、A4の点字用紙1枚でこれだけの情報が提供できるのだ。
図というのは、すばらしいものだ。

今回のぼくのチームは、Tさんという美術系大学を出た女性と、
Iさんという、「どちらかというと美術には興味がない」という変な自己紹介をした女性(この謎は後に解ける)と、3人で行動した。
まず、どこに行きたいかを話し合って出発

ぼくは、どうしても近美でやっている日本画の「福田平八郎展」でいくつかの作品を鑑賞したいと思っていた。
なぜなら、1週間ほど前にやってきた患者さんがこの「福田平八郎展」の話しをしていたからだ。
もう古くからのお付き合いで、20年ぐらい鍼をさせてもらっている。
80になる女性だが、美術やクラシック音楽に詳しい。
特に『水』と、瓦を描いている『雨』という作品は、日本画を飛び越えたような作品だと言っていた。

それで今回ぜひその作品をビューしてみたくなったのだ。
風景画ではなく、瓦とか水そのものに迫る描き方は、何かぼくの感性にも通じるようだ。
というか、ぼくも改めてこういう描き方をしてみたいと思った。
後からみたピンフォール写真は、広角でものを捕らえているようだが、その対局に位置する描き方なのだろう。
とにかく患者さん、今日の2人と会わせて3人から絵を説明してもらったことになる。
年齢層も幅広く、だからこそ伝わってくるものがあったように思う。

鍼をしながら聞いた話しは、それなりにぼくの直感を突き動かした。
しかし、絵を前にした対話は、子どもの頃、2階の子ども部屋から瓦屋根におそるおそる足を下ろして太陽のぬくもりを感じたあの幸せな気分を思い出させてくれた。
たぶんぼくの一人勝手な絵の解釈は、まだぬくもりのある瓦屋根に雨がポツリ、ポツリと降り始めたときの印象なのではないだろうか。

美術館を出て、疎水沿いにギャラリー16へ。
ここでの内容は省くが、作家もおられてコンセプトなどを聞けた。ギャラリーならではの醍醐味だ。
続いてはねうさぎへ。
じつは、この間からやっていた「ネットで展覧会」を見てくれたオーナーから、ぜひ9月に個展をやりましょうという声を掛けてもらっていた。挨拶も兼ねての訪問となった。

ここは、二部屋ともピンフォールの作品展だった。
写真を前にして、3人の会話が始まった。
Tさんは、魚眼レンズのようですねという。
「広角で視野が広いんですね」と、ぼく。

「写真の中心になっているところは?」と聞いてみる。
「中心はあるんですが、そこからの広がり具合が独得です」とTさん。
「ううん。難しいな」と、ぼくは、少し困惑する。

そのときIさんが、
「なんて言うか、シャーって感じ」
思わずオノマトペを口にしてしまったIさん。
「しまった!」という感じが伝わってきた。
しかし、ぼくはその瞬間「わかった」という感じになった。

この擬音語・擬態語というのはなかなか効果的だ。
しかし、あくまでもライブ感のあるときにだけ有効なように思う。

最後は、近くのカフェでコーヒーを飲みながら、感想を話し合った。
Tさんは、大学時代にギャラリー巡りをしていたときのことを思いだして、血が騒いできたと言っていた。
Iさんは、代表の阿部さんの友人で、何となく誘われるままに参加したのがきっかけでビューの鑑賞がやみつきになったと言っていた。
「特に美術には興味はないけれど、みんなでおしゃべりしながらダンダンその世界に入り込んでいく。一人ではけっして見ないだろう世界を見ることが楽しい」
と言う。こういう人もいるんだなぁと初めて知った。
ビューに来る以上、何かしら美術に興味がないと無理だろうと思っていたのだ。

そこでさらに謎が解けた。
最近、阿部さんが書いているビューについての文章を読ませてもらう機会があった。
「美術に関心のある人もない人も」という表現がよく出てくる。
「えっ! 興味のない人にも鑑賞してもらうの?」と、ぼくはとても懐疑的になっていたのだ。
それが今日のIさんの言葉で謎が解けたような気がした。
美術にまったく興味のない人にも、ビューの間口は開いておく必要があるのだ。
コミュニケーションに関心のある人なら、だいじょうぶだということだ。
では、しゃべるのが苦手な人はどう?

|

« 岡崎アート散策 | トップページ | 透明人間 »

日記」カテゴリの記事

コメント

たねさん、手引きの話題がおもしろいので、ぼくも新しい記事を書きました。
たねさんのコメントもそちらの方に引っ越しさせてもらいました。
無断で移動して申し訳ありません。

投稿: 光島 | 2007.06.14 20:22

小学生あたりと、ビューのツアーをやるとおもしろいだろうなと、前からメンバーと話しています。
思わぬ表現が飛び出してきて、きっとおもしろいものをみせてくれるように思うのです。
4、5年あたりがいいかな。総合の時間あたりがうまく使えるといいのですが。

投稿: 光島 | 2007.06.08 23:27

>対話型鑑賞
>小学校の美術教育

実は関心のあるところです。美術というか、図画工作は今おそらくいっぱいしわよせのきてるところで、そこに、新しいことをやれと(しかも手間ひまのかかる、今までとまったく違うアプローチのことを)上から言われて、さて現場ではどうかな?と。

少なくとも小学校の全体数の中で、美術の専任教師がいるよりはいない方が多いですよね。

私の後輩で中学の美術教師をしてる者がおりまして、「鑑賞教育」ということが学習指導要領に入ってるというので私の話に興味をもってきました。ですが彼女の語る実情としては、
「自分も受けたことのない授業をいきなりやれと言われてもできない。それに、いじめ問題などで忙しすぎて、新しいことに取り組む時間なんてない」
そうです。

あくまで私の近くの声を拾っただけですが、状況はかんばしくないなと思っております。
そこから自分が何ができるかは、また次の話になりますが。

横道にそれて失礼しました。


もっと横道にそれますが、「アート」という言葉と、「美術教育」という言葉に深いへだたりを感じるなあと今つくづく思いました…。

投稿: よいち | 2007.06.08 22:58

対話型鑑賞は、よいちさんも紹介してくれたように、いろんな本も出ていて、小学校の美術教育にも取り入れられるようになってますね。
今ちょっと流行です。見えない人と言葉で鑑賞というのは、それとはまったく違うところから出てきていますが、目差しているところは非常に似ていますね。
ぼくもビューの活動を福祉とか、ボランティアとは思っていませんが、
あまりつっこまない方がいいのかもしれないけど、たねさんにガイドヘルプ(手引き)がイヤだと言われてしまうとショックだなぁ。
何かイヤな経験でもあるんですか?

投稿: 光島 | 2007.06.08 00:42

よいちさん、情報ありがとうございます。
対話型鑑賞といっても、必ずしも視覚しょうがい者対象という「フクシ」なわけではないのですね。
それから、ファシリテーターみたいな人がいた方がいいなあ、とは思います。先日の鑑賞では「『日本画』ってどう説明したらいいんだっけ?」とか考えているうちに話が先に進んでしまう、とかいう、「やっぱり少しは知ってる方がよくね?」状態に自分がなってしまったもので(ここで「自分が勉強すれば」というつっこみはナシで(笑))
いや、それより普通の会話についていったり、カフェから出ても自分がどっちの方向を向いてるかわかるようになったり、なによりガイドヘルプがイヤじゃなくなったりするほうが先だろうか、うーん…。
ともあれ、アレナスの本が出ているようなので読んでみます。

お二方、御返事ありがとうございました。

投稿: たね | 2007.06.07 22:11

>たねさん

「対話型鑑賞」ですが、
アメリカのMoMA発祥、アメリア・アレナスという人が提唱した鑑賞方法で、日本では水戸芸術館を中心にいくつかの美術館で実践にうつしています。
参照:
http://www.ableart.org/handbook/2-2.html

そのことを知ったのは昨年、水戸芸術館でギャラリートーカーの研修を受けた時でした。
98年に行われた「なぜ、これがアートなの?」展は非常によく覚えていますが、これが現在と結びついたことによってナルホドと思いました。
http://www.arttowermito.or.jp/art/nazekorej.html

水戸芸術館のウィークエンドギャラリートークの基礎はお客さん主体で、「対話型」の応用になっています。ですが、企画展によっては難しいというのが現場の声であるようです。

ちょうど現在ですと、川村記念美術館で(ここは元々ギャラリートークの歴史としては対話型とは違ったものを持っているのですが)アレナスの企画で展覧会を行っています。
こないだ行ってきましたが、あるフロアをまるごと企画展用にセッティングし、ギャラリーガイドがピックアップした作品の前に座布団を敷いて皆で座ってあれこれ話し合うという形をとりました。
http://www.dic.co.jp/museum/exhibition/mite/index.html

フロアを大胆に区切ったのはいいんですが、壁の能書きがちょっとうるさかった気がします。まあそのくらいやらないと、キャプションとっぱらった成果が出ないのかもしれませんが。。。

投稿: よいち | 2007.06.06 23:48

> 「対話型観賞」の研究では、自分から口を開かない人も巻き込んでしまい、皆で観賞しているという気持ちにさせるというのがひとつのポイントとしてあります。

そうなんですか。たしかに、鑑賞している間に、それぞれの気持ちがほぐれてきて、会話が弾むようになりますね。
そういうときは、だいたいうまくいってるときですね。
しゃべらない人の気持ちまでは、わからないですがねぇ。でも以前に本当に無口な人とツアーで一緒になったことがありました。ちょっと困ったなぁ。
何でこの人は、ここにいるんだろうって感じになりました。

投稿: 光島 | 2007.06.05 18:15

たねさん、キルトの情報ありがとうございます。
 キャッチボールの練習にまたお越し下さい。
ぼくもどちらかというと、会話がへたです。特に見える人とのおしゃべりは苦手でした。
それも年とともに気にならなくなってきたのは自分でもふしぎですが……。

投稿: 光島 | 2007.06.05 18:08

たびたびすみません、たねです。
よいちさん、対話型鑑賞ってビューみたいなものでしょうか?
私、以前薬害エイズ被害者のメモリアルキルトを見る機会があり、そこでは生前のその人をキルトをみながら語る人あり、質問する人あり、触ってみる人あり、キルトを前に深く考える人ありで、キルトを中心として「場」がありました。アートじゃないけどとてもディープでした。
参加型のアートでこんなのがあればいいなと思います。

キルトの展示の案内(6月16日11~16時、17日10~16時、法然院)が来たので少し書いてみました。
メモリアルキルトジャパン
http://mqj.jp/

投稿: たね | 2007.06.05 00:53

たね@人みしりではありません、コミュニケーション下手です。
話し言葉は書き言葉と違い、即断しないといけないため難しいです。相手がふってくれたら答えられるんですが。キャッチボールが苦手なんですね。
ツアーの見学は面白かったです。ギャラリーも皆で入れば気後れしませんし、説明も「こういうふうにするのか」と思ったり、「ガイドヘルプはヤダなあ」と思ったり(笑)
美術を見ている人を見ているのもなかなか楽しい。

なお、たねは野生的ではなくただのワーキングプアです。したがってサバイバル鑑賞なのです(笑)

投稿: たね | 2007.06.04 22:49

> では、しゃべるのが苦手な人はどう?

面白いですね。どうなんでしょう。

「対話型観賞」の研究では、自分から口を開かない人も巻き込んでしまい、皆で観賞しているという気持ちにさせるというのがひとつのポイントとしてありますが。

投稿: よいち | 2007.06.04 22:36

たねさんって、人見知りで、しかも野性的な人なんですかねぇ。
見学って聞いてましたが、創作ワークショップなら見学もありですが、鑑賞ツアーは、それではおもしろくないでしょう。どうされるかと少し心配してました。
どこかのチームにくっついてうまく楽しんでもらえたのかな。それならいいんですが。
たねさん一人が説明するのではないから、チームの他のメンバーと、うまくマルチな会話が展開できればすばらしい鑑賞ができると思いますよ。
起爆剤としては、十分な感性を持っておられることは、ぼくの絵に付けてもらったコメントからも想像できますから。


投稿: 光島 | 2007.06.04 14:59

ども、今日自分がコミュニケーション下手なのを再発見したたねです。&あまり美術にも関心ありませんけど今日はビュー見学参加でしたけど。
ええっと、まず何が知りたいのか聞いてくれると答えられるんですが、こちらから先に何を説明したらいいのかわからなかったです(ビューのホムペで一応チェックはしたがいざとなったらわからない)。店の様子?絵の大きさ?感じ?…謎です。情報が速やかに処理出来にくいんですね、私って。しかも美術をかじったことないから説明も出来にくいし。
うーん、書いていると何故見学参加したのか分からなくなってきた(笑)
あ、話しかけると一般人にも作家が喋るという事を発見しました。びっくりした。それと、普通の美術散策というのはお茶したりしながらするものらしいというのがわかりました。
ちなみに私が一人で美術館に行く時はペットボトル持参、疲れたら椅子占拠でうとうとする、というものです(たまに警備のスキをねらってパンも食べる)。
今回はちょっとビューのコメントにはどーよ?な感想なので、こっちに書いてみました(いや、根が自己中だから)。

投稿: たね | 2007.06.04 02:13

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 岡崎アート散策 | トップページ | 透明人間 »